僕の癌治療


 
入院中、林 信暁さんに次の言葉を贈られました。

  災難に逢う時は災難に逢うがよく候
   死ぬる時節には死ぬるがよく候
   是はこれ災難をのがるる妙法にて候

 良寛さんの言葉でした。動揺するとこの言葉を思い出します。何とも言えず落ち着くと言えば落ち着きます。人は必ず死ぬのです。さりとて簡単にはあきらめられません。良寛さんの『妙法』をいつも考えながら、ドタバタ・ジタバタと自分にできることを探してみました。
 ポイントは、なるべく楽しく気持ち良く、おいしく、そしてお金が掛からないこと。そうでないと続けられません。ガンとは一生付き合わなくてはならないもののようですから。

  ガン治療の最前線

《通常療法について(手術・抗ガン剤・放射線)》

 NHKの放送を見ても、本・雑誌を見ても、血液のガン等、一部のガンを除いて、ここ2030年、たいして進歩はしてないようです。昔、大阪の万博の頃だったか、2000年頃には『ガンは治る病気になる』と未来の予測があったようですけど、大間違い。技術的な進歩はあったようですが、副作用のない良く効く抗ガン剤もワクチン療法・免疫療法・遺伝子治療も、未だに実験の段階。
 国立ガンセンターでも、未だに10年も20年も前に開発された抗ガン剤が治療の中心で、その抗ガン剤の組み合わせや、どのように使うかといったことが彼らの一番の課題のようです(どのガンに使うとか、点滴の時間を変えたり、総量や1回毎の量を変える)。
 新しい抗ガン剤も、患者さんを使って治療と称して実験していますが、これといった新薬が出てないということは、無駄であったということなのでしょう。あまり効かなかったということは解かったわけですが。
 手術で取れるものなら取って、後は放射線と抗ガン剤。これが日本で行われている一般の治療です。それ以外は、特殊な温熱療法等を除くと、自由診療。保険がききません。効果も不明なので、ドクターは一般的には勧めないのです。

 では、どのくらいそれらの方法でガンが治るかというと、これまた厚生省等全国の統計はないようです(数年後、中核病院は公表されるようです)。個々の病院のドクターが本を出したりして発表したりしていますが、自分の実績に自信があるから公表するのですから、現実は更に低いのでしょう。
 色々調べた結果、実際の治癒率は、ガンの種類や年齢・できる所によって大きく違いますが、初期なら90%、進行したものは3050%、末期なら10%以下と、おおよそ見当がつくようです。ガン全体では、およそ半分の人が助かっていることになります。
 しかしながら、初期の中にはいわゆる『ガンもどき』のも含まれていそうなので、「早期発見・治療がうまくいって90%の人が助かった」、「約半数の人のガンが治った」と言うことはできないかも知れません。実際はもっと低そうです。それらを考慮すると、ここ10年、ガンの治療はほとんど数パーセントの進歩でしかないようです。

 しかし、私は現代の通常療法(手術・抗ガン剤・放射線)を否定するわけではありません。それは、重要な選択肢の一つです。私も腸が詰まってしまう腸閉塞に何度もなりかけ、手術は避けられないものでした。
 私が抗ガン剤を使用しなかったのも、事態が切迫していなかったからかも知れません。しかし、抗ガン剤については、言われている通りのようです。胃ガンの専門医学会は、ようやく『抗ガン剤の有効性は認められない』としたようです。
 代表的な抗ガン剤『5FU』についても、仕様書にこのページ1枚分の副作用が列記してあります。頭痛・胸焼け・吐き気と、ありとあらゆる症状が出るそうです。しかしそれでも、助かった人がいることは否定しようのない事実なのです。できれば副作用のない・少ないものからしたいものです。
 実際、医者がガンにかかったらどういう治療を希望するのかとの問いに、アメリカの医者の3分の1が抗ガン剤を否定し、「非通常療法を選択する」と答えたそうです。

 《 民間療法について 》
 その間、民間療法(厚生省が治療として認めていないもの)は、少しずつ手を変え品を変え、少しは進歩した気もします。でも、新聞の広告にあるような驚異的な効果は、『アガリクス』にも『プロポリス』『メシマコブ』にもないようです。
 高額な商品を買っても、治療実績がまったく不明なのも問題です。治った治ったと書いてあって、高額な健康補助食品を売りつけても、治らなかったら詐欺みたいなもの。でも、法的には、『治る』と書いたら違法、『治った』と書いてあったら合法なのです。
 健康食品にもブームがあって、1年とか2年で商品が消えていくのが普通です。ということは、あまり効かないということなのでしょう。が、副作用がほとんど無いし、中には本当に治った人がいるのですから、もっと積極的に研究をしてもらいたいものです。
 医療関係者の多くは製薬会社との結び付きが強く、研究費をもらって治験薬を試すだけ。患者さんが右往左往して色々なもの(サプリメント=栄養補助食品)を試していても、未来につながらないのはとても残念なことです。ここがガンを巡る最も大きな問題だと思います。

 治療効果を試すのなら、副作用のないものから試すべきなのに、実際は、副作用や後遺症の大きい抗ガン剤・放射線、それでも駄目であきらめてから、サプリメントや気功などをしているようです。しかし、多くの日本の医者は効果を認めていないので、病院の通常の治療とサプリメントとどちらが効くか、誰も知らないのです。
 また、知らないだけでなく、患者さんが「治るかも知れないと思って飲もうとする」サプリメントを、禁止する医者の話しも良く耳にします。健康について啓蒙・指導的立場にあるべき医者にあって、インフォームド・コンセント(十分な説明・患者との同意にもとづく治療)が十分なされてないのは、とても残念です。

《自由診療(保険のきかない)病院での治療について》
 その他に日本にも変わった自由診療の病院があります。珍しいそれら病院では、自己免疫細胞の増殖をして患者に返して治療したり、独自の研究で薬(認められてないので補助食品となる)を開発している所もあります。けれども、いずれもかなり高額な出費になるようです。
 僕の知る限りのそういった病院では、治療の実績を公表しているようです。そのような特別な治療でも、末期(遠隔臓器に転移)の場合の生存率が少し変化するかどうか、といった程度。
 自己発表なので、客観的かどうか良く分かりません。つまり、効果がなかった患者さんは退院していくと仮定すると(高額な医療費などで)、それほどの効果はないのかも知れません。

 また病院でも、漢方薬を中心に治療をしている所もあります。保険も一部きくようです。漢方薬がガンにどのくらい効くかどうか、どういった組み合わせが良いのか、まだ不明な点が多そうです。でもすぐには効かなくても、ジワリと効いてくるような気がします。
 中国では、かなりの治療実績があると聞きます。副作用も少ないため、日本でも研究が進むことを願っています。

 《 その他 》
 その他、海外での治療や、道場のような所で食事療法や精神的なトレーニング・気功・太極拳など行なっている所があります。アメリカの人が、インターネットで日本のそういった施設にアクセスして、実際に見学に来ることも珍しくないようです。日本を含めアジアの治療は、世界的に注目されています。すべてを試すことはできませんが、楽しそうならやって見ると良いでしょう。
 僕も、たくさんのことをしたり試してきましたが、いつまた入院となるかも知れません。最後は、初めにあげた良寛さんの『妙法』に行き着くのかもしれません。

現在行なっている治療について

 僕は現在行なっている治療を大きく五つに分類しています(病院での治療・検査を除きます)。
@ 食事療法 
A 運動・ストレッチ・マッサージなど 
B 飲むもの(漢方薬・栄養補助食品など) 
C イメージ・心理療法 
D その他 

これらは毎日決まった通りできませんが、目標として気楽にやっています。きちっとすべて完璧にすることは、またガンが大きくなるかも知れないとも思っています。またこれらはガンだけでなく、他の病気や健康維持のためにも有効かも知れません。

 @ 食事療法
 まずは、水をたくさん飲むこと。これは忘れていたことでした。トイレを心配したり、運動をしない生活をしていると、だんだん水を飲むことが減ってくるようです。体内の流れが淀んで活力が失われ、便秘がちになります。僕は煎じ薬やサプリメントをたくさん飲んでいるので、今は十分のようです。
 食事は魚や貝は食べますが、野菜中心で、動物蛋白は牛乳を含めて取っていません。ただ鶏肉は少々取っています。主食は、お米に麦を入れる麦御飯です。玄米を勧める人もいますが、私には強すぎるようです。
 これらの食事療法は、世界中の積極的治療をしているガン患者がしているようです。アメリカでは、ゲルソン療法と呼ばれるものがあり、火を通さない食事や野菜を丸ごと食べたりしていますが、僕はおいしいのが一番だと考えています。
 日本のほとんどの病院で、菜食の食事が選択できないのは問題です。外国の人に話すと驚かれます。肌がカサカサしている感じを受けることがありますが、たまにハンバーグが食べたくなる以外、問題はありません。効果については、いろいろな本で紹介されているので書きません。
 基本的に、日本人が昔から食べていたものが良いでしょう。特に良いものとして、大豆や納豆、海草類、葦(きのこ)類が挙げられます。納豆は、ニンニクと玉葱の微塵切りを加えて毎日食べています。
 魚類は、海の底をゆっくりと動いているものが良いようです。オレンジやレモンにもビタミンが豊富で、ガンの成長を止めるとも聞いています。
 ただ、畑の物も海の物も、人間の作りだした有毒な科学物質によって何らかの影響を受けています。特に環境ホルモンといわれる物質は、極微量でも人体に影響があることが証明されています。特定の地域に偏らず、違った野菜類を毎日取ることが必要だと思います。
 僕はこれによって、毎日の便通がすっかり良くなりました。決まった時間に大量に出ます。以前にはなかったことで、ガン以外の病気の予防・健康に大変良いのです。

 A 運動・ストレッチ・マッサージなど
・運動選手に大腸ガンの人はいない、とも言われています。体の代謝を高め、機能を十分使うことは、ガンだけでなく、すべての病気にいえることだと思います。ただ、やりすぎてしまうとあちこち故障します。
・私は午前午後で2時間、6q程歩きます。家の近くを散歩しながら、手や肩・首を回しながら歩くのです。のんびりがいいようです。以前、私の体は前に曲がっていました。意識的に背筋をまっすぐに、体をまっすぐにして歩くようになったら、あまり疲れません。そして、たまに山に登ると最高です。山に登ると体が喜んでいるのが分かります。
・夜寝る前には、軽い体操とストレッチをします。少し大変ですがこれをすると、ごほうびに足のマッサージをしてもらえます。
・朝は、タワシで全身を15分ぐらいかけて擦ります。最初は痛くてとてもできませんが、人間は元々そのくらいの刺激の中で生きてきたのです。皮膚が赤くなりますが、これ一発で全身が目覚め、風邪もひかなくなりました。ただ冬はとても辛い。お勧めです。

B 飲むもの(栄養補助食品・サプリメントなど)
これらはすべて口から入れるので、なかなかたくさんは取れません。健康食品の説明書きを見ると、20錠〜30錠とたくさん飲むように書いてあって、そのまま数種類飲むと、御飯が食べられません。適当が良いのです。
 同じアガリクスでも、1000円から10万円(月)と、何を買ったら良いのか迷ってしまいます。そんな時は、精製されてないもの、素材に近く安いものを買っています。たぶん効く要素があるものは、安いものでも効くと信じたい。もともと効き目が証明されてないのですから、高ければ高いほど効き目があるということはないのです。特にガン患者向けの栄養補助食品は、人の不安や助かりたいという心理を利用して、高額な商品を売っています。
 今毎日、新聞に載っている、本を売ってから健康食品を売る商法は、まるで霊感商法のようです。健康食品の箱やビンの蓋はキンキラ、黄金の色。誇大広告でひと山当てようとする、訳の分からない業者が多いようです。僕は、信じなければ効き目が少ないといわれると買いません。信じなくても効くのが薬なのです。信じて効くものなら何でもあります。信じさせると、小麦粉でも効くそうです。
 種類も多くて迷いますが、どんなに苦い薬も体が欲しがっていると自然に飲めるのです。自分で、これは効きそうだと感じるものが良いようです。何度か飲むと、不思議と自分に合っているものが見つかります。また薬局で売っているものだけでなく、自然にあるものも効果がありそうです。そんなものから紹介しましよう。

・尿療法
 これだけ書いても1冊の本になるほど、奥が深くて不思議な治療法です。日本だけでなく、世界で数10万人の人がしていると、ものの本に書いてありました。
 古来からのもので、単純に自分のオシッコを飲むのですが、紹介する本によって、量はさまざまでした。毎日出た全量を、冷蔵庫に入れて飲んでいるアメリカ人もいるそうです。僕は、コップに半分から1杯程度飲んでいます。冷蔵庫で冷やすと飲みやすいそうですが、別にそのままでもどうということはありません。お勧めです。
 効果の科学的データはないのですが、肝臓・腎臓などほとんどの病気に良いとされます。飲むと、1週間ほどで肌がツルツルしてきます。推測では、ホルモン系の病気に良さそうです。
 病気の原因と思われる使われなかったホルモンが尿として出て、再吸収されることにより、何らかの効果があるのかも知れません。ホルモンは2種類、タンパク系とステロイド系に分類され、消化器や肝臓で分解されるので効果が疑われていますが、分解されたものの方が病人には効くのかも知れません。
 糖尿病も、膵腰から出たインシュリンが何らかの異常で、体内での糖の消化や肝臓内のグリコーゲンの生成を疎外しています。異常に出た糖をまた飲んでしまうわけですから、恐いような気がします。でも、病気になるということは、必要なものを取り込まず、必要でないものを取ってしまっている訳ですから、もう一度消化器を通して摂取することは有効かもしれません。
 ただ、抗ガン剤・造影剤や薬などを摂取した後は、絶対やめた方が良いでしょう。外国旅行で化学調味料等を多量にとった後も、私は飲みません。

・枇杷の実
 豊橋の寿美ゑさんに教えてもらいました。固くて苦くておいしくは食べられませんが、何故か効きそうなのです。冷蔵庫に保存して1年中、12粒ほど食べています。

・漢方薬
 手術後の回復に、保険が適応されます。私は『十全大補湯(ジユウゼンタイホトウ)』を飲んでいますが、ガンに直接効くというより、体調を整えるものかも知れません。朝鮮人参が入っているものが良さそうです。他に、『小柴胡湯(ショウサイコトウ)』『カミシヨウオ・ウサン』『補中益気湯(ホチユウエツキトウ)』が良いかも知れません。たまに、朝鮮人参酒も飲んでいます。

・煎じ薬
 毎日、自分で調合したものを作って飲んでいます。自然なものを、なるべく粉にして煎じる時間を少なくしています。量はあくまで適当で、その時々で入れるものが少し違いますが、おおよそ次のものです。 『アガリクス』『霊芝』『柿の葉』『シイタケ』『オオバコ』『センブリ』『山伏葺』
 錠剤になっているものは、基本的に飲みません。効果は盛んに宣伝されているので書きませんが、高分子の多糖体が免疫力を高めるようです。

・うこん
 これは『春うこん』『秋うこん』とあるようです。肝臓に良いという話しで、そのままのものを乾燥、粉にしたものを、食後少量飲んでいます。

・錠剤の類
 これは色々あって、迷うし高額になります。人によってはまったく効かないという人もいます。全部指定通りに飲むと、食事ができないほどお腹が膨れるので、自分にとってこれは効きそうだと思うものを、適当に飲んでいます。プロポリスやAHCCは飲まなくなりました。

ビール酵母
 人に必要な必須アミノ酸がすべて入っているそうです。核酸も入って、非常に安いので助かります。

スピルリナ(またはクロレラ)
 必要な栄養素とβカロチンが入っていて、免疫力を高めるそうです。

・『鮫の軟膏(コンドロイチン)』『ブロコサミン』『キトサン類(水溶性)』等
 これらは、カニやイカ・鮫の抽出物から作られ、さまざまな組み合わせで色々な症状に効くと販売されています。値段も商品もたくさんあって、迷ってしまいます。水溶性のものが良いとか、油材化されたものが良いとか聞きますが、いずれも相性があるでしょう。
 相性とは、ガンができた原因によってであって、無視できません。抗ガン剤の併用などで、科学的な根拠がないのですが、治った人がいます。コンドロイチンはガンの血管新生抑制に、キトサンはガン細胞の増殖転移を押さえるとされています。いずれも、関節傷害などにも効くそうなので、たくさんは飲めませんが少量ずつ飲んでいます。

    SOD等の土佐清水病院の薬
栄養補助食品SODは、野菜等を焙煎し油材化したもので、活性酸素を除去し、免疫力を高め、ガンの増殖を押さえるそうです。アトピーやアレルギー等の治療にも有効だそうです。

C イメージ・心理療法
 これは、本文中にふれているので詳しくは書きませんが、散歩しながらでも、お風呂に入っている時でもできます。私は散歩の途中、大きな木の下で、話しかけるようにするのが好きです。ガンができた所によりますが、アメリカで行なったデータによると、かなり有効だと言えます。
ガン患者が集まり話し合うグループ・セラピーは、1度参加したいのですが、チャンスがありません。ガン患者は病気のことだけでなく、さまざまな問題を抱えているのが普通です。互いに励ますだけで良く、専門家によるサポートや情報の交換にも役立つでしょう。
 セラピーの中には、猫や犬などの動物で心を癒すアニマル・セラピーがあります。猫は特にお勧めです。

D その他
《温泉や旅行》は心と体のリフレッシユのため、とっても良いようです。初め温泉に入る時、お腹の傷を見られるのが何となく嫌だったのですが、今では憤れました。時間があれば出かけています。治療のための病院がある温泉もあるようです。温泉の入り口の看板・効能書きには、「ガン患者はさけてください」とある所があります。症状によっては見合わせた方が良いかも知れません。
《信仰》もまた良いです。病気の治療のために使うというと、熱心な人に怒られそうですが、それも一つの『出会い』と考えればいいのです。次の章に少し書いたので、ぜひ読んで下さい。
《太極拳や気功》
は良く分かりませんが、毎週出かけて行き、やっています。治療と称して『気功院』なるものができ始めましたが、私は興味がありません。太極拳と気功を一緒にしてはいけないのかも知れませんが、楽しいし、体もほぐれて健康になります。お勧めです。
《鍼灸》 
針やお灸は数回試しました。体の機能回復・改善に非常に有効だと感じました。ただ速効性がないようです。なんらかの独特の反応が表れます。眠っている機能を呼び起こし、免疫力を高めるのではないでしょうか。

 最後に。色々な本によると、ガンになると「してはいけないこと」がたくさんあるようです。ストレス、夜更かし・疲れすぎ・煙草・良くない環境、深酒など。でも人間は、たまには羽目を外さないと生きている意味がないような気がします。良いことばっかしていてもガンになるのです。疲れたら休む、それ以外は気楽にやっています。色々治療と称して遊んでいますが、それが一番良いのかも知れません。

僕の癌は「がんこ者」のガン

 結局、どんな治療でも生存率は単に数字であり、自分がその数字に入るがどうかは誰にも分かりません。初期の人がどんどん進んで1年で亡くなる場合もあり、今にも死にそうな末期の人が何もしなくても助かる場合もあり、ガンは本当に不思議な病気なのです。
 特にガンは、データから自分の生死を読み取ることはできないのです。今のところ、どんなガンにも効く、どんな患者にも効く薬はありません。そして、たとえ治っても、人間はいつかは死ぬのです。
 すべて治療効果は、その患者さんの姿勢によっても治癒率が違うようです。アメリカの医学雑誌に載ったデータですが、同程度のガン患者さんを次の4ツに分類して、約5年後の結果をまとめたそうです。
 @ 絶望・失望する。
 A 冷静に受けとめ、覚悟を決める。
 B 自分はガンではない、死ぬはずがないと思う。
 C 認めて、前向きに治療を進める。

 どの程度の進行、どこのガンだったのか不明なので、数字は明記しませんが、@から順に生存率が上がり、各項目毎にそれぞれ約20%づつ程の違いがありました。
 すべてのガンについては言えないと思いますが、少なくとも一部の患者さんについては、気持ちによって明らかに違うのです。『病は気から』といいますが、これほど違う病気は少ないでしょう。ガンが、他の病気とは違うと認識せざるを得ません。

癌(ガン)と言う字は、やまいだれに品物の山
 と、ここまでは一部のガンについての本に書かれています。が、ではどうやって絶望している人を振り向かせるかは、書いていません。
 人間は、過去にしばられています。子供の頃など、病気や死に対してつらくて悲しい思いをしていると、簡単に希望は見いだせません。痛い思いは誰でも嫌です。僕は注射も恐怖でした。肉体的なものだけでなく、悲しい出来事は、特に忘れることはできません。
 どんなに回りが言ってみても、本人が何かを感じなければ、頭に、そして体に入らないのです。正直に言って僕は、入院した日、混乱した頭のどこがで、「これで何もしなくても良い、許される、楽になった」と、感じたものでした。自分の能力以上に、いろんなものを背負っていたのです。
癌(ガン)と言う字は、やまいだれに品物の山。昔の人はガンという病気について、良く知っていたのです。たくさんもの(心も含めて)を持っていると、病気になるのです。放り出せば自然に治るのかも知れません。
人生を考え直し、本当にしたいこと、大事なことを、ある時間の内にすれば良いのです。人間は、1日中寝ている猫のミーチャンと同じ生きものです。猫にしなくてはならないことがないように、人間どうしてもしなくてはならないことはないのです。
 もしあるとすれば、絶望する自分を開放すること、重荷を取ってあげることなのかも知れません。そうした絶望や苦しみとの葛藤が創作・芸術を生み、喜びになると最高なのです(自分でこう書くのも変だが・・)。かくして私は今日も三味線を弾く・・。
 もっとも、完全に悲しみが消えることはないので、それを取る「過程」と言った方が良いのかも知れませんが。

 病気になって強く感じたことは、回りの暖かい愛情でした
そして、治療(治る)を広くとらえるなら、いやされることだと思います。ちまたには「いやしグッズ」があふれていますが、そのようなもので癒されるのでしょうか。人は存在を認められ、愛されていることを確信すると、不安や悲しみが和らぐのではないでしょうか(人からだけでなく、神や仏も含めて)。
 宗教、信仰はそのような意味において重要なのです。お寺や教会は、お寺や教会のためにあるのではなく、自分自身のためにあるのです。今までの僕は、余りにも、知らず知らず物理的・社会的な充足感を求めすぎていました。気がつかない不安がそうさせていたのでしょう。
 モノは、いつか壊れます、目に見えないものにもっと目を向けるべきだったかも知れません。病気になって強く感じたことは、回りの暖かい愛情でした。僕にとって「愛」を知ることは、「絶望することによって」でしか理解できなかったのです。私の癌は「がんこ者」のガンでもあったのです。『信仰や信じること』は、『愛されていること』への証(あかし)なのではないでしょうか。
 聖書(旧約)の中に『鉄は鉄をもって研磨する。人はその友によって研磨される。』とあります。『人は人によって傷つき、人によって癒される。』のです。私の『やまい(病)』は、『愛されていること』を知り、強く慰められたのです。

 終わりに

 夏江さんは手術後、僕の性格が変わると思っていたらしい。ところが、次の日から点滴やチューブであちこち痛くて怒ってばかりいました。何日か経って「やっぱり変わんないか、」と。
「でも、感謝するようになったね」と。道端の花が本当にきれいに見えるようになりました。ほんとだよー。

あとがき

 入院している時、出来事をしっかりメモしました。本を書くと良いね、と言われたけど、あの時は書けるなんて思いもよらなかった。
 癌患者は、とにかく不安です。患者にとっての情報はあるようで、案外ないのです。全体について、ざっと書いてある本があったらいいな〜と思って書いたのですが、いかがでしたでしょうか。世の中に流布している情報については書きませんでした。ご意見・感想などありましたらお寄せ下さい。

 寄稿してくださった皆さんをはじめ、日本キリスト教団岡崎茨坪伝道所の皆さん、尾野さんたち太極拳の皆さん、刈谷の「ひかりの家」の皆さん、「ひかりのさと」の皆さん、「もくもく印刷」の皆さん、「民の声」の皆さん、豊橋の仲間、東京周辺と全国の仲間達、深田さん、後藤さん、田中さん、鳥居さん、浅井さん、冨宅さん、鈴木さん、塚田さん、大西さん、林さん、荻野さん、柴田さん、沖さん、山本さん、森さん、青山さん、永倉さん、三男さん、中野さん、柿田さん、玲子さん、ジョンタ、中村さん、安城更生病院のスタッフの皆さん、Dr小倉さん、海外の仲間、そして印刷をしてくれた渡辺研治さん。

 ありがとうございました。

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著者紹介
           関本文靖
  1954年 愛知県北設楽郡生まれ。学生時代、豊橋・東京で過ごす。
  1982年 岡崎にそば屋『晴味野』をオープン。
        各種施設で『そば打ちコンサート』で長年慰問。多くの国に一人旅、
        教育・福祉・社会問題について著書・
エッセイあり。
  2000年 大腸癌で手術、現在療養中。

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メコンの風 僕の癌治療
         ぼくの癌 治療の旅(改訂版)

発行・編集  みけねこ出版 関本 文靖
200251、初版
2005年     二版

住所 〒4440931愛知県岡崎市大和町荒田115
電話・ファックス (
0564319466

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